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コモディティ化が進む経済(オンライン音楽販売に考える) [2004年01月13日(火)]
Competing on other than Price for Music Sales (The Big Picture)

メジャープレイヤーの相次ぐ参入が話題を呼んでいるオンライン音楽販売ですが、課題がないわけではありません。

・どうすればコモディティ化(誰が売っても商品自体は同じという点で)した業界で価格競争に巻き込まれずに済むか
・少し頑張れば無料で不法コピーが手に入る現在、どうやって消費者に正規の価格を支払うモチベーションを持たせるか


これら大きな2つの課題に対して、面白い意見を提示している"Big Stores Make Exclusive Deals to Bring in Music Buyers" (NY Times)を紹介しているblogです。

Ritholtzのblogで一番強烈なのは冒頭で、

I normally care very little about non-price competition. Over the years, I have learned from any sales affiliated job I had held that such terms as "Service" and "Value-Added" and their ilk were nothing more than code words for "Not price competitive."

サービスだの付加価値だの、一言多い奴に限って価格競争力が無い

という意見は痛いですね。自分の市場価値を考えさせられました。

さて、中身に入りますが、流通業界の巨人・Wal-martが売上を伸ばしているのは食品や日用雑貨だけでなく、CDやDVD等メディアもである、というのは目新しい議論ではありません(ディスカウントストアが音楽の売上に占める割合は、94年 13.5%→03年 34.8%)。

しかし、ディスカウントストアを覗いた人ならご存知の通り、あの手の店は、トップセラーしか置いていないため、品揃えが極端に悪い、という弱点があります。

そこで、Rod Stewartの新譜は、Targetにしか置いてないので、どこの店でも売っているBon Joviの倍の値段が設定されていた、という例を引き、「販売する店を限定する」戦略を紹介しています。

では、オンライン音楽販売の抱える、本質的な難しさ−無料で手に入るものに対してどうすれば対価を支払わせることができるか−に対しては、

AmazonでSarah McLachlan "Afterglow"をリリース前に買ったお客は、すぐにサイトで幾つかの曲が聴け、リリース後は、オマケとしてリミックス版の曲もサイトにアクセスすれば聴くことができるという例がNY Timesの記事には示されています。

This is something that the labels could have/should have been doing for a long time: Giving potential CD purchasers a reason to actually BUY a disc, rather than copy or download one. Its not difficult to put a unique code on every CD, and only when that disc is in your PC can you access additional tracks, videos, etc., from an artist's website. (The Big Picture)

これが本質的な解決になるのか、更なるイタチゴッコを生むのかは微妙なところではありますが。

しかし、音楽を聴く行為自体が、レーベルがDistributeする媒体をレコードプレイヤーやCDプレイヤーに差し込んで、ではなく、PCにダウンロードして、iPodに入れて、それを車に持ち込んで接続して、みたいに変化し始めている今日、データだけをやり取りするオンライン販売は多分不可逆のトレンドになるだろうな、とは思います。

知的財産にまつわる議論に関しては、その立法趣旨に鑑み、

あくまで著作権は、文化を振興するためのものであり、大金持ちなパトロンが職業音楽家を養うわけでない今日、その恩恵を享受する人が薄く広くその対価を創作者に還元することを通じて創作へのモチベーションを維持することが大事

だというのが長年変わらない私の意見なので、自分の創作物に対してやっぱり対価は貰いたい、というクリエイターの権利を保護する仕組みができるのは、良い事だと思います。「別に俺は対価なんか要らない、俺の歌を聴いてくれ」という人が自由に自分の作品を公開できる自由が、対価の還元と両立することで、更に競争が促進され、文化はより多様になるのではないかと思うので。

それにしても、少し気になるのは、それだけ品揃えが悪いにも関わらずディスカウントストアでのメディア売上が伸びていることです(スーパーの本屋に至っては目も当てられないことが多いような気がするので)。

・あまりに選択肢が多様になると消費者は却って選べなくなる。
・その結果、殆どの消費者は「皆が良いというもの」に一極集中するようになる。
・反面、その他の市場は極めて細分化され、ありとあらゆるニーズが満たされるようになる。

というのが大まかな構図でしょうか。

これも私が前からずーっと思っていたことなんですが、

殆どの消費者は、殆どの物事に対して確固たる拘りなんて持っていない

んだと思うので、それが音楽やメディアに関しても出ているだけかもしれません。

例えば私の場合、コーヒーとベト麺、それから映画に対してはかなり趣味がハッキリしているようですが、服や車に対しては「ホドホドなお値段でソコソコ快適ならいいや」ぐらいにしか思っていません。そんな風に、1人の人間がこだわれる物事の範囲というのは極めて狭いんじゃないかと。

ですので、殆どの市場の殆どの商品は、それに対する明確で厳密な嗜好を持つ消費者ではなく、極めて流動的な大多数をターゲットにしていて、その多くの場合は価格敏感度となって現れる、というのが最近の世の中なのかなぁ、と。

そんなことを改めて思った次第です。
Posted at 16:29 | Day | この記事のURL | Clip!!
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» iTunes Music Store Japan が開始されない理由は何か from miamoto.net
P2PとiPodが普及してくれたおかげで、メディア収録されていないデータを扱うことの抵抗感は払拭されつつある。音楽データ販売が成功するための環境は着実に整いつつある。今こそレコード業界の英断を期待する。 [Read More]
Tracked on 2004年05月26日(水) 10:50
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コメント
Posted by:wow gold  at 2009年01月15日(木) 15:41

Posted by:wow power leveling  at 2008年11月12日(水) 14:36

Posted by:WoW Gold  at 2008年06月20日(金) 09:34

Carlisle <Hanis_61@email.com>さんより、下記のコメントを頂きました。

「しかし、音楽を聴く行為自体が、レーベルがDistributeする媒体をレコードプレイヤーやCDプレイヤーに差し込んで、ではなく、PCにダウンロードして、iPodに入れて、それを車に持ち込んで接続して、みたいに変化し始めている今日、データだけをやり取りするオンライン販売は多分不可逆のトレンドになるだろうな、とは思います。」

コメントありがとうございました。
おっしゃる通り、ダウンロード音楽販売そのものは、とっても便利ですし、これがない世界にはもう戻れないというのは私も全く同感です。

ただ、創作活動に対するインセンティブが維持されない限り、長い目で見ると文化の振興には繋がらない、という私の持論は変わりません。

しかし、従来のJASRAC一極集中管理の体制や、ロイヤルティの仕組みを全面的に肯定するわけでもありません。もしかしたら、従来の「コンテンツ購入時に、コンテンツの対価を支払う」という枠組みは変わっていくのかも知れないな、とは思います。

※申し訳ありませんが、公序良俗に反するサイトのURLが含まれていたので、元のコメントは削除させて頂きました。また、同一IPアドレスから、別のエントリに対して異なるHNで、異なるサイト(同様に、公序良俗に反すると思われるもの)のURLが記載されていましたので、禁止IP指定をさせていただきました。あしからずご了承ください。コメントの内容自体はありがたく承りました。
Posted by:Tomomi  at 2005年01月12日(水) 03:38

「そうそうそうそう」

> 何か別の食い扶持がある傍らでやる創作活動からよい作品を生み出せるほど創作活動は甘くはないんである。

私が言いたかったのはこういうこと。
あぁ、スッキリした。
Posted by:Tomomi  at 2004年01月14日(水) 17:38

「お金が先か発表意欲が先か」

制作したものを享受することに対して相応の対価が支払われてそれをもとに生計を立てられること、というのが健全な創作活動の根本にあると思うのです。人類史上で小説・随筆などの現存する文学作品の多くが、何にもしなくても生きていける貴族たちの趣味的作品(源氏物語など)を除いて、17世紀以降から登場し始めるのは決して偶然ではなく、印刷術の普及により制作したものの大量生産が可能となって制作者が生計を立てられる程度の収入が見込めるようになった、ということと無縁ではないと思います。最近はすっかり斜陽産業っぽいと見られがちな出版業界ですが、そんなことは全然なくて漫画・映像も含めた出版と考えると、まだまだいけるじゃん?と思うわけなんだが、それはとりもなおさずよい作品(=買ってもいいかなという作品)が出ているからであり、よい作品が出せるのはそれで食ってけるから、というのが根底にあると思うわけ。

タダみたいな値段でコピーが作れるからタダであることがすばらしいという議論がいまいちだと僕が思うのは、じゃあ何でもタダでできるなら作り手は何で食っていけばいいのさ、ということで、何か別の食い扶持がある傍らでやる創作活動からよい作品を生み出せるほど創作活動は甘くはないんである。
というわけで、きっと探せばタダでファイル出回ってるだろうな、と思われるときでも、これは、と思うCDを僕は買ってしまうわけ(ほんとはiTunesで買いたいのだが、早く日本のBilling Addressのクレジットカードが使えるようにならないものか)。

といって、家の中がCDとDVDであふれ返っていることの言い訳にはならないか・・・
Posted by:ダンナ  at 2004年01月13日(火) 22:44

「補足:知的財産に対する私の基本スタンス」

「既存の著作権をめぐるビジネスのフレームワークには何も問題がなく、完璧だ」とは思いませんが、一時あちこちで見られた「何でもタダの世の中が素晴らしい」的な意見(最近はあまり見なくなったけど)には懐疑的です。

難しい話はニガテなので、シンプルに言いますと、永六輔「職人」という本が私は好きなんですが、「職人芸は、職人の作るモノを使うお客がいなくなると滅びる。職人の作るモノを買おう、使おう」という永六輔の意見に賛成なのです。

#アマチュアであっても、瞬間的・単発ならプロを上回る瞬間はあると思いますが、コンスタントにパフォーマンスをあげる能力を持っているのがプロフェッショナルだ、と、私は、どんな世界であっても「プロ」に対しては敬意を持っています。

まぁ、本当に必要がなくなったものは滅び行くのが世の定めではあるのですが、決まり切った音楽や小説、映画しかない世の中なんてつまらないぜ、って。

無駄のない人生、文化のない社会って、味気ないと思いませんか?
Posted by:Tomomi  at 2004年01月13日(火) 16:46