Competing on other than Price for Music Sales (The Big Picture)
メジャープレイヤーの相次ぐ参入が話題を呼んでいるオンライン音楽販売ですが、課題がないわけではありません。
・どうすればコモディティ化(誰が売っても商品自体は同じという点で)した業界で価格競争に巻き込まれずに済むか
・少し頑張れば無料で不法コピーが手に入る現在、どうやって消費者に正規の価格を支払うモチベーションを持たせるか
これら大きな2つの課題に対して、面白い意見を提示している"
Big Stores Make Exclusive Deals to Bring in Music Buyers" (NY Times)を紹介しているblogです。
Ritholtzのblogで一番強烈なのは冒頭で、
I normally care very little about non-price competition. Over the years, I have learned from any sales affiliated job I had held that such terms as "Service" and "Value-Added" and their ilk were nothing more than code words for "Not price competitive."
サービスだの付加価値だの、
一言多い奴に限って価格競争力が無い
という意見は痛いですね。自分の市場価値を考えさせられました。
さて、中身に入りますが、流通業界の巨人・Wal-martが売上を伸ばしているのは食品や日用雑貨だけでなく、CDやDVD等メディアもである、というのは目新しい議論ではありません(ディスカウントストアが音楽の売上に占める割合は、94年 13.5%→03年 34.8%)。
しかし、ディスカウントストアを覗いた人ならご存知の通り、あの手の店は、トップセラーしか置いていないため、品揃えが極端に悪い、という弱点があります。
そこで、Rod Stewartの新譜は、Targetにしか置いてないので、どこの店でも売っているBon Joviの倍の値段が設定されていた、という例を引き、「販売する店を限定する」戦略を紹介しています。
では、オンライン音楽販売の抱える、本質的な難しさ−
無料で手に入るものに対してどうすれば対価を支払わせることができるか−に対しては、
AmazonでSarah McLachlan "Afterglow"をリリース前に買ったお客は、すぐにサイトで幾つかの曲が聴け、リリース後は、オマケとしてリミックス版の曲もサイトにアクセスすれば聴くことができるという例がNY Timesの記事には示されています。
This is something that the labels could have/should have been doing for a long time: Giving potential CD purchasers a reason to actually BUY a disc, rather than copy or download one. Its not difficult to put a unique code on every CD, and only when that disc is in your PC can you access additional tracks, videos, etc., from an artist's website. (The Big Picture)
これが本質的な解決になるのか、更なるイタチゴッコを生むのかは微妙なところではありますが。
しかし、音楽を聴く行為自体が、レーベルがDistributeする媒体をレコードプレイヤーやCDプレイヤーに差し込んで、ではなく、PCにダウンロードして、iPodに入れて、それを車に持ち込んで接続して、みたいに変化し始めている今日、データだけをやり取りするオンライン販売は多分不可逆のトレンドになるだろうな、とは思います。
知的財産にまつわる議論に関しては、その立法趣旨に鑑み、
あくまで著作権は、文化を振興するためのものであり、大金持ちなパトロンが職業音楽家を養うわけでない今日、その恩恵を享受する人が薄く広くその対価を創作者に還元することを通じて創作へのモチベーションを維持することが大事
だというのが長年変わらない私の意見なので、自分の創作物に対してやっぱり対価は貰いたい、というクリエイターの権利を保護する仕組みができるのは、良い事だと思います。「別に俺は対価なんか要らない、俺の歌を聴いてくれ」という人が自由に自分の作品を公開できる自由が、対価の還元と両立することで、更に競争が促進され、文化はより多様になるのではないかと思うので。
それにしても、
少し気になるのは、それだけ品揃えが悪いにも関わらずディスカウントストアでのメディア売上が伸びていることです(スーパーの本屋に至っては目も当てられないことが多いような気がするので)。
・あまりに選択肢が多様になると消費者は却って選べなくなる。
・その結果、殆どの消費者は「皆が良いというもの」に一極集中するようになる。
・反面、その他の市場は極めて細分化され、ありとあらゆるニーズが満たされるようになる。
というのが大まかな構図でしょうか。
これも私が前からずーっと思っていたことなんですが、
殆どの消費者は、殆どの物事に対して確固たる拘りなんて持っていない
んだと思うので、それが音楽やメディアに関しても出ているだけかもしれません。
例えば私の場合、コーヒーとベト麺、それから映画に対してはかなり趣味がハッキリしているようですが、服や車に対しては「ホドホドなお値段でソコソコ快適ならいいや」ぐらいにしか思っていません。そんな風に、
1人の人間がこだわれる物事の範囲というのは極めて狭いんじゃないかと。
ですので、殆どの市場の殆どの商品は、それに対する明確で厳密な嗜好を持つ消費者ではなく、極めて流動的な大多数をターゲットにしていて、その多くの場合は価格敏感度となって現れる、というのが最近の世の中なのかなぁ、と。
そんなことを改めて思った次第です。
P2PとiPodが普及してくれたおかげで、メディア収録されていないデータを扱うことの抵抗感は払拭されつつある。音楽データ販売が成功するための環境は着実に整いつつある。今こそレコード業界の英断を期待する。 [Read More]